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国の検定制度についてですが、昭和38年に消防法の改正が行われ、消防法施行令第37条に定める「消防のように定める機械器具等」については従来の任意検定から義務検定に改められました。消防法第21条の2第1項で一定の形状、構造、材質、成分及び性能(以下形状等という。)を有しないときは火災の予防若しくは警戒、消火又は人命の救助等のために重大な支障を生ずるおそれのあるものであり、かつ、その使用状況からみて当該形状等を有することについてあらかじめ検査を受ける必要があると認められるものであって上記政令第37条で定めるものについては、検定をするものとする、とあります。当社製品で上記政令第37条に該当するのは金属製避難はしご(固定はしご、つり下げはしご、ハッチ用つり下げはしご)と緩降機本機です。当社商品で該当するのは、消火器、自動火災報知設備、移動式粉末消火設備等です。また、国家検定には二段階あります。
まず、総務大臣による「型式承認」ですが、上述の器具等が総務省令で定める技術上の規格に適合している旨の承認を言います。見本と書類により試験が行われます。日本消防検定協会又は総務大臣の登録を受けた法人が試験を行い、当該試験結果を申請人(メーカー等)に通知します。申請人は申請書に当該試験結果を添えて総務大臣に申請します。総務大臣は申請を審査し、技術上の規格に適合していれば型式を承認します。結果を申請人に通知するとともに公示(官報に登載)しなければなりません。この通知された文書(かつては日本工業規格B5、現在はA4)の表題は「型式承認について」となっており、総務大臣名で発出されます。お取引先から「認定書をFAXしてほしい」というご要望をいただいた場合、検定対象品であればこの文書(型式承認書と呼んでいます)をFAXしております。
「個別検定」は個々の器具が「型式承認」を受けた型式と同一であるかどうかについて日本消防検定協会又は総務大臣の登録を受けた法人が検定します。検定はメーカー各社の工場等で行われますが、来社する検定協会又は法人の職員は不正防止のため毎回異なり、事前に誰が赴くのかはメーカー側には知らされません。これに合格すると合格シールを製品に添付できます。このシールがなければ販売施工はもちろん、販売目的での陳列をすることさえ消防法で禁じられています。言い換えると検定対象となる器具等の試作品を展示会等に出品することはできません。
技術の進歩等により、型式承認の失効という制度があります。規格省令等の改正により、総務大臣が官報に登載公示することで該当する型式の効力を失わせる制度であり、その効果は個別検定にまで及びます。つまり、失効した型式を持つ検定対象機械器具等は設置してあっても未設置の状態にあるものと法的にみなされます。これについては別項のメンテナンスと保証にも関係してきます。型式承認の失効には三つの場合があります。
その流れをみていきます。
この場合は関係法令の改廃とは無関係に型式承認の失効手続きが行われます。同時に個別検定合格の効力も失われます。不正の手段とは贈収賄、脅迫、申請書の虚偽記載等がこれにあたります。
承認を受けたものの、個別検定を申請しなかった場合などです。災害等により工場が使用できなくなった等の場合を除き、申請者の都合で個別検定の申請をしなかった場合等に適用されることがあります。
別項で述べた型式承認の失効という制度について、ここでは当社製緩降機を例に取り、具体的に見て参ります。緩降機の型式失効は昭和40年に「緩降機の技術上の規格を定める省令」が成文化されて以降2回行われています。またそれより前、言い換えると検定を受けていない緩降機(以下「未検品」という。)については型式失効という言葉こそ無いものの、事実上の失効処理がなされています。
対象となった当社製緩降機:該当製品なし
特例期間:昭和52年3月1日~昭和63年2月28日
規格省令が施行される昭和40年6月1日より前に製造されたものがこれにあたります。一連の経緯ですが、「緩降機の技術上の規格を定める省令」(昭和40年1月12日自治省令第4号)が公布されたあと、昭和48年11月1日自治省令第31号として改正が行われました。自治省は現在の総務省です。このときどのようなところが改正されたのかということについては、当社には資料が残っていないため残念ながら判りません。ただこのときの対応として、既存の緩降機について更新が必要だという判断がなされたものです。 その後、他の設備の型式失効に足並みを揃える形で、「消防用機械器具等及び消火設備等の技術上の基準に関する特例を定める省令」(昭和52年2月28日自治省令第3号;最終改正平成12年9月14日自治省令第44号)が公布されました。この中で未検品の緩降機については、「昭和40年6月1日前に製造されたもの」として、消防庁長官が定める基準に適合することが猶予期間適用の条件とされました。昭和52年3月1日から起算して交換するまで11年の猶予が与えられました。
対象となった当社製緩降機:降第43-1号(遊星歯車式)
型式承認日:昭和43年8月9日
型式失効日:昭和52年2月28日
特例期間:昭和52年3月1日~平成14年2月28日
規格省令が施行された昭和40年6月1日以後、上述の改正が行われた昭和48年11月1日より前に製造されたものがこれにあたります。一連の経緯は上記未検品と同じですが、上述の「消防用機械器具等及び消火設備等の技術上の基準に関する特例を定める省令」(昭和52年2月28日自治省令第3号;最終改正平成12年9月14日自治省令第44号)の中で当該緩降機については、「昭和40年6月1日以後昭和48年11月1日前の緩降機の規格に係る型式承認を受けているもの」として、昭和40年6月1日以後昭和48年11月1日前の緩降機の規格に適合することが猶予期間適用の条件とされました。昭和52年3月1日から起算して交換するまで当初は20年(平成9年2月まで)でしたが、最終的には25年の猶予が与えられました。猶予期間延長の理由は判りませんが、当社としては後述の第2回目の型式失効との兼ね合いで現場の混乱を避けるためではなかったかと考えています。
対象となった当社製緩降機:計4型式
降第49-2号(遊星歯車式)
型式承認日:昭和49年4月27日
降第50-7号(遊星歯車式)
型式承認日:昭和50年10月27日
降第50-8号(遊星歯車式)
型式承認日:昭和50年11月20日
降第51-4号(歯車式)
型式承認日:昭和51年6月24日
型式失効日:上記4型式いずれも平成6年1月31日
特例期間:平成6年2月1日~平成14年2月28日
上述の改正が行われた昭和48年11月1日以後、平成6年1月31日より前に製造されたものがこれにあたります。一連の経緯ですが、「緩降機の技術上の規格を定める省令」(昭和40年1月12日自治省令第4号)の全部が改正され、改めて「緩降機の技術上の規格を定める省令」(平成6年1月17日自治省令第2号;最終改正平成12年9月14日自治省令第44号)として公布されました。改正理由としては、消防庁予防課長通知第11号(平成6年1月18日)に記されたとおりですが、最も大きなものは着用具の変更です。従来は使用者が着用具を身に着けたあと、調整環を使用者の手で引き寄せる必要がありました。これを忘れると降下中にすっぽ抜ける恐れがあり、問題となっていました。この改正では調整環が無くなり、着用具を身に着けると、内蔵されたバネ等によって自動的に締まるようになりました。ただし、バネの力が強すぎて痛いという声があり、それを改良して現行の緩降機に至っています。このときの経験を「緩降機の着用具の改良」として「平成12年度消防防災機器の開発等の作品募集」に応募したところ、翌平成13年3月13日に消防庁長官優秀賞を受賞いたしました。この省令改正にあわせて、「緩降機の技術上の規格を定める省令(平成6年1月17日自治省令第2号)の施行に伴う消防法施行令第30条第2項の技術上の基準に関する特例を定める省令」(平成6年1月17日自治省令第3号;最終改正平成12年9月14日自治省令第44号)が公布されました。この中で当該緩降機については、「昭和48年11月1日以後平成6年2月1日前の緩降機の規格に係る型式承認を受けているもの」として、昭和48年11月1日以後平成6年2月1日前の緩降機の規格に適合することが猶予期間適用の条件とされました。平成6年2月1日から起算して交換するまで当初は5年(平成11年1月31日まで)でしたが、最終的には8年1月の猶予が与えられました。
上記の話をまとめます。緩降機本機前面にある銘板をご覧ください。緩降機の型式番号は「降第」で始まります。その直後に来るのが元号による年数です。この数字が6以降の緩降機、言い換えると平成6年以降に型式承認を受けた物であれば、失効ではありません。逆にこの数字が5以前の緩降機、言い換えると平成5年以前に型式承認を受けた物であれば、失効です。例えば、当社製品で言うと「降第6-6号」は平成6年の6番目に型式承認の申請を出し合格した物となります。ここでいう6番目とは文字通り6番目です。「申請者=メーカー」毎の番号ではありません。全ての申請者の通し番号です。要するに型式番号が判れば申請者に関係なく失効であるか否かが判別できます。念のため申し添えますが型式承認番号で判るのは型式が承認された年です。製造年月をお知りになりたい場合は銘板上に併記してありますので、そちらをお確かめください。